こんにちは。病院から介護施設に転職した看護師、さすらうです。
本記事では、看護師と介護士が仲が悪いと言われる理由と解決策を解説します。
私の周りでも「看護師と介護士が、本当は仲良くしたいのにできない」「でもどうすれば良いか分からない」と悩んでいる人たちが多いです。
実際に、本記事を読んでいるあなたも、同じような悩みを抱えたことはありませんか?実は私も介護施設に転職した当初はそう思ってました。
仲が悪いまま放置していると、職場の雰囲気が悪くなるだけではありません。
介護施設の一番の役割である、入居者・利用者の生活を守るサービスを適切に実施できなくなります。
その結果、入居者・利用者の家族からクレームを受けたり、最悪の場合は大きな事故につながるかも知れません。
本記事では、看護師と介護士が仲が悪い理由と具体例をお伝えします。
後半では解決策を解説します。また、仲が良くなったことで実施できた良いサービスについても紹介します。
病院勤務15年・介護施設勤務4年の私が、実体験を基に解説しますのでぜひ参考にして下さい。
- 看護師と介護士の関係
- 意見が一致しない事例、協力できた事例
- 協力して働くためのコツ
看護師と介護士は仲が悪い?
看護師と介護士は必ずしも仲が悪いわけではありません。
ただし、看護師と介護士の意見が合わない場面は多々あります。
たとえば、職業によってケアする内容が違うので、お互いのケアに対して口出しをしたら当然イライラしますし、仕事の合間には楽しくプライベートな話もします。
つまり、入居者・利用者のことをお互いが思っているからこそ、双方の仕事のやり方に口出しをしたら仲が悪くなってしまうのです。
こういった状況の中で、意見が一致しにくい場合の対処法も説明しているので、ぜひ最後までご覧ください。
看護師と介護士の意見が一致しない理由3つ
看護師と介護士の意見が一致しない理由は、役割の違いがあること、決めつけによるものが大きいです。
逆に言えば、違いを理解し決めつけをなくすことで改善につながります。
①看護師と介護士の役割が異なるから
看護師は医療的観点から、介護士は生活の観点からケアを考えるという役割の違いがあります。
役割の違いを説明していきます。
看護師の役割|医療的判断からケアを提供する
看護師は医療的な判断からケア方法やタイミングを決定します。
しかしその判断が生活の場である介護施設にそぐわないこともあるので、気づかいが必要です。
介護士の役割|生活面を中心にケアを提供する
介護士は生活面を重視する判断でケア方法やタイミングを決定します。
その判断が健康面でのリスクを見逃してしまう場面もあるので、注意が必要です。
②看護師は介護士より上だと考える看護師がいるから
看護師資格のほうが担える業務が多いことを理由に、看護師のほうが立場が上だと考えている看護師がいます。
同じ職場でケアを提供するプロどうしであり、「上」「下」などの立場はないはずです。
立場の上下をつけてしまうことが、看護師と介護士の意見がより一致しにくくしてまいます。
③看護師は上から目線と決めつける介護士がいるから
過去に特定の看護師からの「上から目線」を経験した介護士は、もちろんイヤな思いをしています。
この経験から、「全ての看護師は上から目線だろう」と決めつけてしまう介護士がいます。
看護師それぞれに考えが違うのに、ひとまとめに決めつけてしまうと意見のすり合わせができません。
もし仮に、あなたが看護師であれば対等な目線で接することを意識し、介護士であれば、すべての看護師が高圧的ではないことを理解しておきましょう。
意見が一致しない具体例3つ
看護師と介護士の意見が一致しない場面は、入居者の健康面に関わる内容が多いです。
たとえば以下の場面です。
- 入浴方法
- 体位変換
- パッド交換
それぞれ順番に見ていきましょう。
意見が一致しない場面①|入浴方法
看護師の意見:臥位(機械浴)での入浴をすべき
- 入浴は血圧低下→意識レベル低下へのリスクがある
- 毎回かならず意識レベル低下から回復できるとは限らない
- 入浴方法は座位ではなく臥位(機械浴)が好ましい
介護士の意見:座位での入浴のままで良い
- トイレで意識レベル低下はあったが、すぐに回復したから
- 入浴で意識レベル低下をしたことがない
- 機械浴はスケジュールとマンパワー的に無理がある
意見が一致しない場面②|体位変換
看護師の意見:体位変換をすべき
- 適切なポジショニングであっても長時間の同一体位は良くない
- 褥瘡ができてから対応するのではなく、事前の対応が必要
介護士の意見:体位変換はしない
- ポジショニングによって発赤が消失しのたで現状維持で良い
- 他動的に体位変換を行うと睡眠をジャマすることになる
意見が一致しない場面③|パッド交換
看護師の意見:パッド交換の頻度を増やすべき
- 尿路感染を繰り返しているため、今後の再感染のリスクを回避すべき
- これまで皮膚トラブルはなかったが、リスクはある
介護士の意見:パッド交換の頻度は変えない
- 尿路感染を起こしたことはあるが、回復した
- 本人の希望に沿っているし、皮膚トラブルがない
意見が一致しにくい職場の特徴
看護師と介護士の意見が一致しにくい職場は、職場風土や環境による要因があります。
たとえば下記のような特徴です。
- 話し合いの場をもたない
- 極端な人員不足
順番に説明しますね。
話し合いの場をもたない
- お互いの考えや環境を説明する機会を設けない
- 定期的なカンファをしていない
私の職場では各ユニットリーダーや看護師リーダー、事務系社員で毎朝のミーティングがあります。
さらにユニットでは毎日それぞれの決まった時間にカンファをしています。看護師も同席します。
このような職場風土がなければ、じっくり話し合いをする機会を得にくいですね。
極端な人員不足で忙しい
極端に人員が不足している職場は、忙しさのせいでスタッフみんなが疲弊してしまいます。
ミーティングが実施できないだけではなく、日常的に相手の立場を尊重した意見交換ができません。
在籍しているスタッフの努力だけでは改善しづらい問題です。
常にスタッフを募集している施設への転職は避けた方がいいでしょう。
専門性の違い|看護師と介護士
看護師と介護士はそれぞれの専門性に違いがあります。
お互いの専門性の違いを改めて認識することが、意見の不一致を改善できるきっかけになります。
看護師の専門性
- 入居者が安全で安心して生活するために、医療的視点でサポートする
- 日頃は入居者の価値観や介護士の業務との兼ね合いを優先する
- 急変時などは他の条件よりも優先的に、医療的視点での対応をする
もっとも重要な役割は、体調不良や急変などで医療的介入をする時です。
介護士の専門性
- 入居者が安全で安心して生活するため、直接的にケアを提供する
- 本人の価値観と生活に合わせたケア方法の決定と提供
- 急変時などは医療的観点からの判断に従い、ケア方法やタイミングを変更する
入居者・利用者とのかかわりが多く、「ふだんとの違い」を看護師よりも先に発見することも多いです!
病院と介護施設の違い
病院から介護施設に転職した看護師は、まず最初にそれぞれの違いを理解することが大切です。
介護施設で医療サービスを提供するために必要な知識だからです。
病院は医療を提供する場
病院は医療サービスを提供する場です。
患者それぞれの価値観やペースは後回しになる傾向はありますが、最も優先されるのは医療サービスが安全かつ円滑に進むことです。
介護施設は生活を提供する場
介護施設は入居者・利用者が安全かつ安心して生活を送るための場です。
医療的観点で良くないこと(例:糖尿病があっても毎日甘いお菓子を提供する)を介護施設では実施している場面も多いですが、最も優先されるのは入居者・利用者の生活の場を提供することです。
看護師の役割の違い|病院と介護施設
病院と介護施設ではそれぞれで看護師が担う役割が違います。
役割の違いを理解することが介護施設での適切な看護につながります。
病院の看護師の役割
- 医療サービスを安全かつ円滑に進めるための看護を行う
- 診療の補助
- 療養の場を提供しケアすること
介護施設の看護師の役割
- 入居者・利用者の生活のため看護を行う
- 医療的な優先度を状況により判断する
- 生活の場を提供しケアすること
施設に転職してすぐの看護師が悩むこと
病院から施設に転職してすぐの看護師は、必ずそのギャップに悩みます。
すぐには病院と介護施設の役割の違いになじめません。
ギャップによる悩みはどの看護師も必ず経験しますが、じっくり向き合えば適応できます。
それでは具体的に説明していきますね。
介護施設での医療的サポートを理解できない
病院では医療を円滑にするための看護を行い、介護施設では生活を支えるための看護を行います。
私も転職した当初はこの区別ができず、馴染むまでに時間がかかりました。
優先順位が分からない|医療サービス・介護サービス
入居者・利用者の生活を守ること、医療的観点からのサポートは優先順位をつける必要性があります。
どちらも大切だけど生活の場や本人の価値観に合っているか?
介護サービスとのバランスはどうなのか?
介護士と話し合い、適切な順位をつけられるようになるまで、かなり時間がかかります。
介護施設の業務全体を理解できていない
病院の看護師は医療面も生活面もひっくるめて看護師が担います。
患者さんの毎日のスケジュールを把握し、その中で看護業務を実施。
しかし介護施設ではスケジュールなど生活全般を把握しているのは各ユニットの介護士です。
看護師は個々のスケジュールを把握しておらず、部分的な関わりをします。
そのため転職した当初は、介護施設全体の中で自分が担う役割を理解するのに時間がかかります。
良好な関係を築くポイント5つ
看護師と介護士が良好な関係を築くには、お互いの役割と意見の違いを認識しながら意見交換をすることがポイントです。
5つの理由を挙げましたので、見ていきましょう。
①専門分野の違いを理解する
看護師と介護士は別の専門分野を担うので、同じケアを実施する場合もアプローチや方法が違います。
専門的な観点から、相手と自分の意見が違う理由を理解しましょう。
②お互いを尊重しながら意見交換
否定的にならず、それぞれの専門性を尊重しながら意見交換をしましょう。
冷静に話し合うことで双方の考えへの理解が深まります。
③目標とするケアを話し合う
「入居者・利用者にこうなってもらいたい」という目標を話し合いましょう。
双方が同じ目的を目指す話し合いであれば、意見が違っていてもお互いが納得いくような結果につながります。
④ケアの根拠を伝え合う
お互いが考えるケアの方法に違いがある場合は、根拠を伝え合うことが大切です。
意見が一致しない場合、その根拠を理解することで適切なケアの決定に役立ちます。
⑤入居者・利用者を第一に考えて意見交換する
意見が一致しない場面では、お互いの立場や考えを主張しがちになります。
しかし大事なのは入居者・利用者を第一に考えることです。
より良いケアを決定するための話し合いであることを意識しましょう。
自分たちのための話し合いではなく、入居者・利用者のための話し合いですもんね。
協力できた事例3つ|意見交換で良いケアへ
私は介護士さんと協働する過程で、しっかり意見交換すると良いケアにつながるのだと何度も実感しました。3つの事例をご紹介します。
アイスマッサージ|本物の果汁
看護師の観点では「この状況ならしょうがない」という判断でした。
しかし介護士からこんな提案がありました。
食べられないけど、いつもと違う楽しみを提供してあげたいです。
季節の味を楽しんでもらいましょう!
入居者さんも家族さんも喜んでくれましたね!
病院だったら「衛生状態がどうのこうの…」ってなるから、私たちにこの発想はなかったです。
入居者の変化を情報共有|良いタイミングで介入
住宅型居室である程度は自立した生活を送っている方への介入です。
看護師と介護士はそれぞれ別の視点で情報を把握していました。
毎回、確実に内服ができますね。
スタッフと話すことも良い刺激になります。
生活の流れに沿ったルーティンを設けると、自然な形でリズムが整います。
見当識の保持にも最適です。
趣味の時間をスケジュールに組み込む
ナースコールが頻回で「今なにしたらいい?」「これで合ってるのか?」と質問や確認行為が多い方への関わりです。
睡眠剤を内服してもらう前にできることはないか検討しました。
本人と家族から生活歴をくわしく聴取。
若い頃は登山をしたり楽器を弾くなど、多趣味で活発な方だったようです。
ご自身で時計を見ながら「○時だから歩いてくる」と活発な人柄に合ったルーティンが合っていますね。
もともと楽器がお好きだっただけに、ピアノ演奏にも楽しく取り組んでおられます。
「レパートリーを増やしたい」と頑張る姿を尊敬します!
まとめ|別の職業だからこそ良いケアができる
看護師と介護士は、専門性の違いから現場での意見が違う場面は珍しくありません。
しかしお互いの共通した目標を基に意見を交換することで、より良いケアを提供できるようになります。
「協力できた事例」に挙げたように、別の職業で意見交換できるからこそできるケアがあります。
良いケアを提供することが、わたし達スタッフの楽しさややりがいにもつながります。
仲が悪いのではなく、意見が違う
介護施設の現場では、看護師と介護士の意見が一致しないことは多々あります。
だからと言って「仲が悪い」のではなく、それぞれの立場による考えの違いです。
お互いの違う意見を参考にしあうことで、良いケアにつながります。
転職してすぐの看護師は役割が分からない
また病院から転職して間もない看護師は、介護施設における自分の役割を理解できません。
しかし経験を積むことで理解が進みますので、じっくり向き合いましょう。
共通の目標|良いケアを提供する
看護師・介護士は良いケアを提供したいという共通の目標があります。
お互いの意見を根拠とともに話し合うことで、必ずより良いケアにつながります。
コロナの影響で忙しく、わたし達の職場もギスギスしていたことがあります。
でも職場全体で「大変な時だからこそ協力し合おう」という考えに変わってきました。
「この環境で可能な、より良いケア」はどんなものなんだろう?と話し合えるようになったのは大きな収穫でした。
これからも協力してがんばろう!
施設看護師のさまざまな悩みについてくわしく解説
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